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パワハラの末路
<side美月>
「おはようございます!」
「おはよう、向原さん」
「おはようございます、体調大丈夫ですか?」
出社して早々、あの桜井さんが体調を気にかけてくれた。こんなことは初めてだ。
いつも田沼さんの後ろにくっついている人なのに、何の心境の変化だろう……と思ったが、その好意は素直に受け取ることにした。
「金曜は急に休んでしまってすみません、お陰様で今日はもう元気です」
「それなら良かったです。今日も無理しないでくださいね」
「ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げて、自席に座る。
田沼さんも出社してきたものの、挨拶を交わしたくらいで金曜の件は特に謝罪も無かった。
(拓さんが言っていた通り、既に帰ったと思って戸締りをしたから自分は悪く無い、というスタンスなんだろうな……)
それ以外は必要最低限の言葉を交わすくらいで、私も引き継ぎを兼ねた外回りでどんどん忙しくなっていった。
最後の方は、もうほとんど顔を合わせることも無かった。あんなに悩んだ田沼さんとの関係も、こんなにあっさり終わるなんてーー。
その後、南さんは無事にとあるWEBデザインの会社に転職し、私もアドプランホールディグスに転籍となった。
私を含めた社員の半分くらいは、転籍する道を選んだようだ。
そして田沼さんは、拓さん曰く、大手の広告代理店の面接はことごとく落ちたらしい。
古い伝手を辿って、なんとか地方の小さな広告代理店に転職したと言っていた。しかもあんなに得意としていた営業ではなく、事務職で。プライドもズタズタになってしまったそうだ。
というか、拓さんはどうしてそこまで知っているんだろう?
そして驚いたのは桜井さんだ。なんと、田沼さんの後を追って同じ会社に転職したらしい。まさか、そこまで慕っていたとは思わなかった。
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