パワハラの末路

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「例えば、『この資料の内容だとクライアントには伝わりづらい。じゃあどこを修正すれば良いと思う?』というような感じです」 「それで、その後はどのようにヒントを与えていたのですか?」 「え? そこからは自分で考えさせていましたが」 「それは……ヒントというより、『ただ指摘しただけ』でしょう。部下の方は困っていなかったのですか?」 「えぇ……自分で考えて、きちんと修正していました」 「それだけで修正できるんでしたら、部下の方はさぞ優秀だったんでしょうね」 採用担当者が哀れむような目をこちらに向けている。 なぜ? なんでも手取り足取り教えていては、成長も何もない。 それに、向原さんは仕事が出来なかった。指摘しないことの方が少なかったくらいだ。 仕事が出来ないのに隠れて副業して、松本さんにも色目を使って……それなのに『部下の方はさぞ優秀だったんでしょうね』ですって? この担当者とは考えが合わないのかもしれない。万が一採用されなかったとしても、考え方が合わないんじゃ仕方ないか。 「非常に聞きづらいことではあるのですが……そのような指示の仕方で『ハラスメント』に発展することはなかったのでしょうか?」 「ハァ……!? 私のやり方がハラスメントだったと言うんですか?」 「いえ、そう受け取られる可能性もあるなと感じまして。あくまでも私個人の感想ですが。今のご時世、ハラスメントには厳しいですからね」 (この人まで、私の行動を疑う訳……?)
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