パワハラの末路

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この時、向原さんを資料室に追いやった時のことが一瞬頭を掠めた。 でも、あれは『彼女があれくらい痛い目を見ないと、何も変わらない』と思ってやったことだ。 今まで指導してきたのに、全然改善されない。成長しない。だから、あの時の件も含めて、自分がやってきたことは全てハラスメントだと思っていない。 「私は一切、ハラスメントはしていません。部下には常に愛情を持って指導してきました。  服装に困っているようであれば一緒に買いに行ってあげようかと提案したり、仕事以外の付き合いも大事にしてきました」 「………」 面接では自分を出し切ったが、あまり手応えは感じられなかった。 その後、この広告代理店からは「お祈りメール」が届いた。 今回がダメでも、次がある……と思っていたのに、なぜかなかなか決まらなかった。まるで、裏で操っているんじゃないかと思うくらいに。 *** 「転職活動の調子はいかがですか?」 桜井さんとオフィス近くでランチをしていると、転職活動の話になった。正直、あまり上手くいっていないので歯切れの悪い回答になってしまう。 「何社か受けているんだけど、なかなか上手く進まないのよね。年齢的なこともあるのかしら」 「そうでしょうか? 田沼さんは広告営業のプロなので、どこでもやっていけると思うのですが……」 「どこでも、というのは買い被り過ぎよ。ターゲティング広告とかSNS広告とかはやってこなかったし、得意なのは雑誌とか紙面の純広告だけ。Webだとしても同じようなものしか扱えないわ」
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