パワハラの末路

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「だとしても、田沼さんはプロフェッショナルだと思っていますよ。クライアントの信頼も厚いですし」 「ふふ、いつもありがとう」 桜井さんが私に対して尊敬の念を抱いてくれていることは、素直に嬉しい。実は、桜井さんとは前職も同じ会社なのだ。 今の会社に転職が決まった時、桜井さんは私の後を追うように同じく転職してきた。 「……そういえば、以前、松本さんに『向原さんのメンタルのフォローをして頂けませんか?』と言われました。全社員1on1をやった時に」 「え?向原さんの? どこがメンタルケアが必要なのよ。私の方がメンタルケアしてもらいたいくらいだわ」 「確かに元気が無い時もありましたし、腕が真っ赤になったりしてましたから、そのことでしょうかね」 「フンッ 向原さんが色目を使って、松本さんも言いなりなのね。結局、若い女の子が良いのかしら」 桜井さんは「どうなんでしょうかね」とボソッと言っただけで、もぐもぐと目の前のパスタを頬張っている。 私を追って転職して来るくらいだから私側についているとは思うけど、この『どちらにもつかない、誰のことも悪く言わない』スタンスというのは、いつも気にかかる。 何かあった時、コロッと態度を変えてしまうんじゃないかと心配になるのだ。
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