新天地

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新天地

とうとう、新天地・アドプランホールディングスでの初日を迎えた。 転籍と言っても、出社する場所も働く仲間も様変わりで、ほぼ転職と変わらなかった。 ピカピカのオフィスビルに、受付も無人ではなく有人で、ひっきりなしに外部からの打ち合わせ客の対応をしていた。 受付のあるフロアは沢山の人が行き交っていて、見ていて目が回りそうだ。 (拓さんがいるとはいえ、業務内容も難しくなるし不安は尽きないな……あれ?) 受付の女性陣の中に、見覚えのある顔があった。どこで会ったかな……と考えを巡らせていると、 「え、ミカさん……?」 ミカさんともばっちり目が合って、にこっと笑顔を返される。向こうも気付いたようだ。 「向原さん、どうしました?」 「すみません、知り合いとよく似ていたので。後で挨拶しておこうと思います」 広告事業部一課の秋田愛菜(えな)さんに、ビル内を案内してもらっている最中の出来事だった。 秋田さんは新卒でアドプランに入社しており、今年で8年目らしい。一課に配属されて半年くらいとのことで、秋田さんと同じチームに私も配属された。 凛としたバリキャリ女性という感じで、年齢は近いが憧れのようなものを感じてしまう。 「じゃあ、行きましょうか」 「はい」 受付のあるフロアを見学した後は、会議室フロアや社食、やり取りの多い部署など順番に案内してもらった。 一課のあるフロアに戻り、改めて挨拶回りをした。同じチームには先ほどの秋田さんをリーダーに、一木(いちき)純平さん、大塚玲奈さんというメンツだった。 本当に良い人ばかりで、とても働きやすそうだ。 転籍と同じタイミングで、拓さんも一課に戻って来ていた。色んな人に声をかけられていて、ここでも相変わらず忙しそうだ。
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