新天地

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「美月、ただいま」 「拓さん、おかえりなさい」 このやり取りも日常の一コマになってきた。 引き継ぎでとにかく忙しい日々が続いたが、土日に合間を縫って内見し、私たちは2LDKのマンションに引っ越していた。 「今週、秋田さん達に歓迎会を開いてもらうことになったんです。その日は帰りが遅くなると思います」 「わかった。歓迎会は秋田と…一木と大塚かな?」 「はい、そうだと思います」 「男がいるのか…美月は酔うと甘えるタイプって言ってたし、不安しかないな。帰り迎えに行くよ」 「え!? 大丈夫ですよ、むしろ拓さんが来たら皆さんびっくりしちゃいますよ」 「むしろ俺の彼女だって、常に牽制しておいた方が良いだろう」 「牽制って誰に…?」 「美月は自分がモテることを全く自覚してないのか?」 「モテる?私が?」 「……美月が俺以外に目移りしないように、しっかり教え込まなきゃな」と言って、拓さんに押し倒された時だった。 『ピンポーン』 「誰だこんな時間に…なんか嫌な予感がするな」 『ピンポンピンポンピンポーン』 「え、誰ですかね?」 「俺が見てくるよ」 モニターに映る顔を見て、頭を抱えている拓さん。やむを得ず一階のドアを開けたらしい。 「美月、ごめん。弟が乗り込んできた」 「え、拓さん弟いたんですか?!」 「あぁ、最近会ってなかったんだけど……」 『ピンポーン』 「あ、部屋の前まで来たな。用件聞いて帰ってもらうよ」 そう言って玄関に向かうと、何やらやり取りをして結局室内に入ってきた。 「こんばんはー! 君が兄さんの彼女さん?」 「はい、初めまして。向原美月です。」 「美月さんね。俺、拓の弟の亮です。よろしくねー!」 「はぁ…宜しくお願いします」
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