新天地

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突然の弟さんの登場に、拓さんは頭を抱えている。何というか、凄くノリが軽い……。 顔は似てるけど、兄弟でこんなに雰囲気が違うものだろうか? 「兄さんが広い所に引っ越したって聞いて『もしや』と思ったんだけど。やっぱり、彼女がいたんだね〜」 ノリは軽いけど、こちらを見る目が笑っていない。まるで、兄に適した女性なのか、見定められているようだ。 「亮、何しに来たんだ?」 「いや、仕事の帰りに近くを通ったから、顔見に来ただけだよ。そういえば兄さん、父さんがまだうちの会社来ないのかって言ってたよ。  それに、女性の影が全く見えないから、そろそろお見合いセッティングするぞって。たまには会いに行ったら?」 「……うちの会社? お見合い?」 「あれ、美月さん、聞いてないの? うちの親、松本コンサルティングっていう、国内でも結構大きいM&Aのコンサルティング会社を経営してるんだよ」 「え?」 「会社自体は世襲では無いんだけど、ほら、兄さんはこれまで色々経験してるから……」 「亮、俺は今アドプランホールディングスの社員だ。それ以上でもそれ以下でもない。それに今日は美月も疲れてるから、もう帰ってくれ」 「はーい。突然来ちゃってごめんね。美月さん、また会おうね〜!」 嵐のように現れて、あっという間に消えていってしまった。 あまりにも情報量が多過ぎて、呆気に取られて無言で立ち尽くしてしまう。 「美月、ごめん。亮から聞く形になっちゃって……実家のことは隠してた訳じゃなくて、言うタイミングが無かったというか」 「いえ、その……お見合いの件は?」 「……それに関しては、俺も初めて聞いた。父親が勝手に騒いでるだけだ。早めに美月を連れて行った方が良さそうだな」 「そうなんだ…」 「俺のこれまでとか、家族関係のことを話すよ。聞いてくれる?」 「もちろんです。お茶淹れますね」 そう言って、お茶を用意してから2人でソファに座り、拓さんのこれまでのことや家族関係について初めて聞くことになった。 ***
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