それぞれの思惑

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それぞれの思惑

2人でソファに腰をかけ、温かいお茶を飲みながら一息つく。拓さんは何から話そうか、考えている様子だ。 「うちは父、母、長男の俺、次男の亮の4人家族なんだけど……美月は一人っ子だったよね?」 「はい、私は一人っ子ですね。子供の頃から兄弟って憧れでした」 「……兄弟って普通はさ、長男がしっかりしてて、次男が自由奔放ってよく言わない?」 「はい、よく言いますね」 「うちは逆なんだよね」 「え?」 どういうことだろう? と首を傾げる。拓さんも十分しっかりしてる。というか、しっかりし過ぎてて非の打ち所がない。 「前にプログラミングやってたって言ったの覚えてる? 美月の前の会社で初めて挨拶した時、自分でコードも書けるって言ったと思うんだけど」 「はい、覚えてます」 「独学でプログラミングを勉強して、大学4年の時に起業したんだ」 「えぇ!? そんな過去があったんですか?」 はは、と笑って、昔を懐かしむように上を見上げた。 「起業して、色々事業を転換しながらある程度形になったサービスがあって。  社員数も増えてきた段階で、大手企業が似たようなサービスを始めたから、会社を売却したんだ。どうしても、大手の資本力には負けるだろう?」 「それが何歳の時なんですか?」 「28歳の時。ちょうど4年前だね。父親は松本コンサルティングを経営してたから、そのタイミングで『お前もこっちで働け』ってかなり言われたんだけど、松本で働くか、2回目の起業をするか決めかねてて、フラフラしてる所を今井社長に拾われたんだ」 「アドプランの社長ですね」
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