それぞれの思惑

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「その時に言われたのが『どうせ今暇だろう?次の起業までの少しの間で良いから、うちの会社を手伝ってくれ』って。  それでIT人材派遣事業の立ち上げを手伝ったのが始まりだった。父親と今井社長も昔から知り合いだし、それだったら仕方ないかって父親も納得して。  そのうち広告事業の方も手伝い始めて、結構面白くてそのまま居付いちゃったって感じ」 初めて聞く拓さんの過去に、驚きがいっぱいだった。でもまだ聞きたいことは沢山ある。 「拓さんが自由奔放で、亮さんがしっかりしてるって言うのは? 拓さんも充分しっかりしてると思うけど」 「俺は自分のやりたいように自由にやってきたけど、その分、父親も亮には『自分の会社を継いで、次を担ってほしい』っていうのを結構押し付けてたと思う。亮は新卒で松本コンサルティングに入社して、本当によく頑張ってたよ。  『あの松本社長の息子なんだから、これくらいできないと』ってプレッシャーも大きかったと思うし、逆に仕事ができないと『社長の息子だから優遇されるのか』って周りの目も厳しいだろうから、とにかく必死だったと思う」 「そうだったんだ……」 あんなにノリが軽いのに、仕事はもの凄く出来るのか。ちょっと想像がつかなかった。 「実際の所は本人に聞かないと分からないけど、自由奔放にやってきた俺を許せないんじゃないかな?  自分はこれだけ松本のプレッシャーに耐えてるのに、自分だけ幸せになるのは許さないって。だから、今日みたいに突然押しかけてきたのかなと思ってる」 (……私はむしろ逆に感じたけどな。兄を凄く尊敬してて、相手の私を見定めにきたって感じがした。でも、これはただの勘だから、まだ言わないでおこう) 「ちなみに今井社長は、もう松本には戻らず今の会社で部長、と言うか役員クラスまで俺を昇進させたいみたいだけどね」
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