それぞれの思惑

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「いいな〜〜松本拓さんがいる課じゃないですか!!」 「え、松本さんのこと、知ってるの?」 「当たり前じゃないですか、私、松本拓さん狙いで転職してきたんですもん!」 え…?と耳を疑う。 拓さん狙いで転職してきたって、どういうこと……? 「銀座で松本さんと、今井社長が来た日あったの、覚えてます? 私と美月さんと、りんさんの3人でクラブ(れん)に行った日です!」 「あ、うん、覚えてる」 「あの時、私は今井社長と拓さんのお父様の接客をしましたけど、お二人に気に入られちゃって。素直に喜んで転職相談とかしてたら、今井社長から『そういえばうちの会社、受付募集してたと思うよ』って言われたんです!  拓さんのお父様も『拓は女性に関心がないのかと思って、今日無理やり連れてきた』って言ってたし、もしかしたら私にもチャンスがあるかなと思って!」 「そんなこと話してたんだ……」 「はい、それで試しに面接受けたら受かっちゃって。もうこれってですよね!?  ……でも、拓さんにはなかなか会うチャンスが無いんですよねぇ。来客をお繋ぎするくらいで。ビル内でばったり会えないかな?とか思ってるんですけど。  私、拓さんのために転職までしてきたので、美月さんには是非協力していただきたいんです!」 「それは……私も同じ課といっても、そんなに頻繁にやり取りしないし……」 突然のお願いにしどろもどろになってしまう。拓さんに会うためにわざわざ転職までして、私が『付き合ってて同棲してます』なんて言ったら、何をされるか分からない。 「無理に2人の場をセッティングしてほしいとか、そこまでは言いません! 拓さんの好きなものとか、今日は出社してるとか、たまに教えて頂けると嬉しいんです」
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