それぞれの思惑

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「あーーそれが、前職でパワハラ受けてました…。でも、それは仕事が出来ないからとか、そういうことだったと思います」 秋田さんと大塚さんが顔を見合わせる。 ちなみに一木君はガツガツお肉を食べていて、聞いてるような聞いてないような……とても自由だ。 「それは、あれよ。絶対年下の可愛い子をいじめてたパターンよ」 「本当ですね、向原さん、普通に仕事デキる人だと思いますよ。見てて分かります」 「いやぁ、それはどうですかね……まだまだ勉強することも多いですし」 お世辞かもしれないが、そう言ってもらえて嬉しい。アドプランには良い人がいっぱいだなと改めて思った。 「それで、ランチ後あんまり元気が無さそうだけど、何かあった?」 「あ、私も気になってましたー」 「え、嘘、元気無さそうでした?」 秋田さんも大塚さんも、よく見てる……。果林ちゃんとの会話を引きずって、周りに気を遣わせていたと分かって余計に落ち込みそうだ。 「すみません、心配おかけしてしまって……」 「もしかして、松本さんのこと?」 「え!?」 「なになに、どういうことスか?」 「え、松本さん?」 秋田さんの問いかけに、大塚さんと、お肉をがっついてた一木君も身を乗り出す。 「あのね、2日くらい前に、私見ちゃったのよ」 ゴクリと唾を飲み込む。秋田さんは一体何を見てしまったんだろう? それに、果林ちゃんみたいに、拓さんのことを好きな人がこの場にいたらどうしよう……。 「松本さんがカフェテリアで休憩してるのが見えて、後ろ姿だったから、スマホの中が見えちゃってさ。  ほら、私視力2.0だから遠くのものがよく見えちゃうんだけど」 「裸眼で視力2.0は普通に羨ましいっス」
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