それぞれの思惑

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マスターの仁(ジン)さんとはあまり話せなかったので、もう少し話してみたいなと思っていた。 バーに向かう途中、前回お店を出た直後に拓さんに初めてキスされたことを思い出し、つい顔を火照らせてしまう。 「美月、どうした? 顔赤いけど、さっきのお店で結構飲んだ?」 「いえ!さっきはそんなに飲んでないですよ! あんまり飲むと拓さん拗ねそうだし」 「あぁ、男がいる場でいっぱい飲んで甘えたら困るって? まぁそうなったら一木でも手加減なしだな」 「え、怖いからやめて…?」 「はは、冗談だよ。すぐ美月は本気にするからなぁ」 「拓さんが言うと冗談に聞こえないもん」 そんなことを言い合いながら、Bar三日月の扉を開く。金曜夜ということもあって、結構人で埋まっていた。 事前に拓さんから仁さんに連絡しておいてくれたお陰で、2人分の席は確保されていた。 「松本さん、美月さん、いらっしゃい。お待ちしてましたよ」 「マスター、こんばんは」 2人で案内されたカウンター席につく。 今日はどんな美味しいカクテルに出会えるんだろう。 「今日は何になさいますか?」 「俺はいつもので」 「松本さんはジンリッキーですね。美月さんはどうされますか?」 「私は今日もマスターのおすすめでも良いですか? ミモザ以外の新しいものが良いです」 「わかりました、では少々お待ちください」 仁さんが手際良く作る様子を眺める。無駄のない動きには毎回、惚れ惚れしてしまう。 今日は何かな? と楽しみにしていると、拓さんに話しかけられた。 「美月、何か話したいことがあったんじゃない?」 「え、よく分かりましたね!?」 「なんとなく。今日、何かあった?」 果林ちゃんとのランチでの出来事や、先ほど秋田さん達と話したことを共有した。
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