それぞれの思惑

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「はは、秋田にニヤついてる所、見られたのか。恥ずかしいな」 「もう〜 この間のデートの写真見てたんですか?」 「そうそう。仕事で疲れた時、見返して癒されてる」 「なんだか私まで恥ずかしくなってきました……」 ニヤニヤしながら拓さんがこちらを見ている。相変わらず、2人の間に流れる空気ははち蜜みたいにトロリと甘い。 「あと、受付の三木谷さんの件は、またか……って感じだな」 「またってどういうこと?」 「たまにいるんだよな……。俺狙いで、転職したりバイトしたりする人。迷惑以外の何ものでもないけどな」 「えぇ……もはや芸能人じゃないですか。ファンみたいな」 拓さんは苦笑している。前に行きつけのお店で待ち伏せされたって言ってたし、本当にモテるんだな。それはそれで凄く大変そうだ。 「今回はもし俺達の関係が知られた場合に、どう動くかが心配だな。美月にまた何かあったらと思うと、気が気じゃない。俺も注意するようにするから」 「何されるか本当分からないですよね。また閉じ込められたらどうしよう……とりあえずスマホを常に持ち歩くくらいしか思いつかないです」 「……美月さん、松本さん、お出しして宜しいですか?」 「あ、すみません、つい話し込んじゃって……」 仁さんは、話がひと段落つくのを待っていてくれたようだ。 拓さんにはいつも通り、ジンリッキーが出された。私のはと言うと…… 「可愛い、チェリーが乗ってる! これは何ですか?」 「こちらはエンジェルキッスです。カクテルピンにレッドチェリーを刺して、グラスの上に飾っています」 「わぁ。名前は聞いたことがあるんですけど、飲むのは初めてです! 今日はどうして、これにして下さったんですか?」
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