それぞれの思惑

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「以前、松本さんから、美月さんはカルーアミルクのような甘いお酒が好きと伺いまして。でも、美月さんは好奇心旺盛な方で新しいお酒を試されたい様子だったので、甘めのお酒で冒険してみました。  また、こちらはデザートカクテルなのですが、美月さんはあまり量を飲まないとも伺いましたので、最初からお出ししてみました」 「か、完璧過ぎる……!」 拓さん、私の好みまで共有してくれてたのか。 好みを踏まえて作ってくれた仁さんも流石だけど、拓さんはどこまでも完璧な人だ……。 「ありがとうございます。楽しみです。拓さん、乾杯しましょ」 「あぁ、今日もお疲れ様」 「「乾杯」」 チェリーを口に含んでから、早速エンジェルキッスを味わう。チョコレートミルクのように甘く、クリーミーな味わいだった。 「うん、美味しいです! カクテル、ハマりそう」 「明日休みだし、もし飲めそうなら色々飲んでみると良いよ」 「はい、そうします!」 いつも外で飲む時は酔い過ぎないようにセーブしているけど、今日は拓さんが一緒ということもあって、酔いは気にせず2杯目にミモザを飲んだ。 少しフラつき始めた所で、拓さんが「そろそろ帰ろう」と体を支えてくれた。 仁さんにお礼を言い、お店を出たところでまた「美月」と呼び止められた。 もしやまたキスされる!?と思って、咄嗟に目をつぶると、拓さんの「フッ」という笑い声が聞こえた。目をゆっくり開けると…… 「またキスされると思った?」 あ、これ、いじわるしたんだな。ひどい。 その余裕な顔、崩しちゃうんだから。 私は突然、拓さんの腕をぐいっと引っ張って、「ちゅ」と優しく口付けた。 不意打ちに驚いた拓さんが、口に手を当てて固まっている。どんどん顔が真っ赤になっていった。 「美月からキスされるの、めちゃくちゃ嬉しいんだけど……何これ、夢?」 「あははっ キス以上のこと、いつもしてるじゃないですかっ」 「ねぇ美月、もう一回」 「だめです〜 これ以上すると拓さん止まらなそうだから」 拓さんとの楽しいひとときで、嫌な気持ちも全てすっかり上書きされてしまった。 ***
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