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亮と美月
「みーつきさんっ」
「亮さん……」
仕事も少しずつ慣れてきた頃、亮さんが突然私の前に現れた。
拓さんより早く上がり、マンションに入ろうとした時だった。まだ拓さんはオフィスにいるし、私ひとりだ。
この様子だと、私が帰ってくるのをここで待っていたんだろう。
「拓さんはまだ帰ってないんですけど」
「うん、美月さんと話しがしたかったから、待ってたんだ」
「ここで立ち話も何なので、近くのファミレスとかでも良いですか?」
「うん、大丈夫だよ」
近くのファミレスに移動して、ボックス席に2人で向かい合う。
亮さんと拓さんは少し雰囲気は違うが、さすが兄弟だけあって端正な顔立ちをしている。亮さんもさぞモテるのだろう。
それぞれ食べたいものをオーダーして、ご飯を食べながら他愛もない雑談をした。ご飯も食べ終わって一息ついた頃、亮さんが今日の本題を切りだした。
「美月さんって、兄さんのどこが好きなの?」
「どこがと言われましても……全部ですね」
「わーお、すごいね! どっちが先に好きになったの?」
「お互い一目惚れで、告白は拓さんからでした」
「そうなんだ〜 兄さんと付き合う人とか、兄さんに付きまとう女性って、みんな好きになったきっかけは『一目惚れ』って言うんだよね〜」
突然、棘のある言い方をし始めた。
やっぱり牽制が目的なのか。でも、何のため?
それに、拓さんに付きまとう女性が「一目惚れ」であることを、なぜ亮さんが知っているのだろう?
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