夜空の星に願いを込めて

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夜空の星に願いを込めて

 あれから10年の月日が流れた。 音葉~おとは~の活動は4年間続き、プロデビューの話が来た矢先、きよちゃんが病に倒れ、翌年に他界した。 乳がんだったらしい。 家族がピアノを止めたのは、治療に専念して欲しかったからだと後から知った。 きよちゃんは入院するまで、病の事を私達に隠し続けた。 そして倒れる寸前まで、彼女はピアノを弾き続けた。きよちゃんにとって、ピアノを弾く事が生きる事だったのだろう。  そして私達、音葉~おとは~は、小さなレコード会社に拾われて、活動を続けている。 利美ちゃんは音大を出て、プロのヴァイオリストでありながら、クラシックとバンド活動を両立してくれている。 私達、音葉~おとは~は3人になり、ピアニストとベースはサポートメンバーに支えて貰っている。 今日もステージのバンド紹介の時、私達は夜空の星に向けて、天に指さしこう叫ぶ。 「バンドリーダー 今野紀代美!」 姿は無くても、魂はずっと一緒にいると信じている。 きよちゃん、ありがとう。 大好きだよ。 私は今日もこの言葉を胸に、天の星になったきよちゃんと一緒に歌を歌う。 それはきっと、私がステージを降りるその時まで続いて行く。[完]
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