選ばれない私

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選ばれない私

出会いは運命だった。  私はいつだって……『選ばれない』側の人間だ。 歌うのが好きで、夢は歌手だった。 中学生の頃、周りでバンド活動が流行っていた。 同級生がバンドを組む事になったらしいが……、そこに私は含まれなかった。 幼い頃から『歌が上手』『リズム感が良い』と言われて来たから、自然と歌手を夢見るようになった。 ……でも、私はいつだって『選ばれない』のだ。 「深崎は歌上手いから……。ほら、うちら素人じゃん?」 「うちら、お気楽なバンドやりたいからさ。プロ目指す深崎とはバイブス違う感じ?」 「私達は、アイドル目指してるからさ……。方向性違うじゃない?」 等など……理由は様々だ。 別に同じ年齢の中学生バンドに、クオリティなど目指してなんか無いのに……。 勝手にイメージを決められて、友達は多くても『選ばれない』人間の私は、ずっと1人で歌を歌っていた。 友達は 「深崎、歌上手いだからさ。ボーカル欲しがってたじゃん?」 と、クラスメイトのバンドをやっている人に私を売り込みしてくれたりしていたらしいが、答えは全て『No!』だった。  理由は分かっている。 私は声が低いのだ。 所謂アルト声で、日本人が好む声は高くて可憐な声。女性アーティストの声だと、私の声には高すぎてほとんど原曲キーでは歌えない。 これが、私が歌手を目指してぶち当たった壁だった。 バンドに憧れても、私は『選ばれない』人間。 いつしか私は、自分にそうレッテルを貼るようになっていた。
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