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「まちこが結婚まで考えてくれてるなんて嬉しいなぁ」
「そ、それは......その......」
(あ、あれ?)
いつの間にか脱がされたヒールが踵を揃えて並べられて居る。上着は彼が丁寧にハンガーに掛けてくれた。どこか様子が違う彼なのに、所作だけはいつもの彼と同じで丁寧だ。
「それなのに知らない男の人に着いて行こうとしたんだ?」
「......そ、それは。冗談で」
言葉で怒られているわけではないのに、怒られている気がする。宙に浮いてふわふわするのは、酔っているからだけじゃなくてお姫様だっこされているからみたいだ。
「別れるって、今日はずっとそんなこと考えてたの?」
「そ、それも冗談、だから」
(おかしい......のに......!)
さっきから胸の高鳴りが止まらない。
「そっか。悪い冗談を言う子にはお仕置き、しないとだね」
仄暗い微笑みで彼は私を部屋まで連れて行く。
“ネトネトに粘着されたいし、束縛されたい”
胸の奥をギュッと掴まれたような感覚。ドキドキしてしまうのは、きっと私の嗜好のせい。
(私、彼のこと、大当たり、かも)
私は彼がどこに行っても着いて行く。
この先も、ずっと。
ーおわり
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