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「何を?」  遠くに引っ越そうとしている癖に、私のことなんてどうでも良いと思ってる癖に。彼は私の手を優しく、でも、しっかりと掴んで離さない。 「福岡って違うよ。上福岡だよ」 「?」 「埼玉の南の......上福岡。知らない?」  ネットで検索をかける。確かに上福岡という地名があるらしい。埼玉はくわしくないからよく知らなかった。それに。 「いや、どうするって、こないだ、聞いたよね」 「通勤が途中まで一緒になるからね。朝の時間とか合わせたらもっと一緒に居られるんじゃないかって思ったんだよ」  そんなの、わからなかった。  ニコニコしながら彼は私の様子を窺っている。 「私、九州の方かと思ってて。それでっ」  こうなるとひたすらに恥ずかしい。それに、何か色々と口走った気がする。 「僕が遠くに行くと思って将来のこと一生懸命考えてくれたんだ、可愛いね」 「〜〜っ!!」  形勢がいつの間にか逆転されている。  顔が真っ赤になって熱いのは、酔ってるせいだけじゃない。
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