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/  四月中旬。ギターサークルの親睦会として新入生十余名で大学近くのカラオケ店に行くことになった。  俺は面倒だな、断ろうかなと散々悩んだ挙句、最初ぐらい顔を出しておかないと後々輪に入りづらくなるだろうからと、仕方なく参加を決めた。  集合場所には音吹も居た。新歓の日に悪目立ちしていたせいもあるだろうが、奴の名前だけちゃんと覚えていた自分に腹が立つ。  カラオケが始まると、それぞれ挨拶がてら「Show-Way」やら「トンチキ夜叉」やら「NON VERBAL BABY」やら、最近人気歌手の曲を歌っていく。音楽サークルに入るだけあり、それなりに歌唱力に覚えがある者もいるようだ。  俺の番が来た。とりあえずランキング上位の曲を入れてみたら、早速隣の女が「あっ、Show-Wayだ」と食いついた。馬鹿は苦手だが、扱いやすい点だけは好感が持てる。 「爽やかな初夏の風に乗り 光の粒両手いっぱいに捕まえるのさ Hey,Summer Time……」 「きゃあー! カッコいい!」  適当に歌い上げると、カラオケルームは本日一番の歓声に包まれた。AメロBメロあたりはうろ覚えだったが、例の女が大はしゃぎしているので特に問題は無かったらしい。 「光村くん、めちゃくちゃ歌上手だね!」 「そう? そりゃどうも……」  ちらと横目で音吹の様子を伺うと、興味無げに曲選択用タッチパネルを弄っていた。まぁ、別にいいけど。  音吹はおもむろにタッチパネルの送信部をカラオケ機本体に向けた。俺も興味はないが、他の皆に合わせて壁に設置されたモニターに目をやる。 「え……これ、キルストだよね……?」  画面に踊る禍々しい演出を見て、誰かがドン引きしたような声を漏らした。
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