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「別れよっか。私たち」
ある日のデート帰り。夜ご飯も外で食べよっかぐらいのトーンでされた提案に、俺は微かに動揺した。付き合ってからわずか二ヶ月目のことだった。
「……なんで?」
「だって響くん、全然私のこと好きになってくれないんだもん」
俯く奏の顔に、夕陽が濃い陰を作っている。
「私は響くんのことが大好きだから……いつか振り向いてもらえたらって頑張ってきたけど、なんか、一方的すぎて疲れちゃった。今日だって響くん、ずっとつまらなそうだったし」
「そんなことないって。サークルの奴と馬鹿やってる時も、Show-Wayのライブの時も、俺ってずっとこんなテンションじゃん」
「うん。だから、それも別に好きじゃないんでしょ?」
「そんなこと、」
ないとは言えなかった。俺の動揺は大きくなる。
隠せていると思っていた。だけど、奏は俺の本心に気付いていた。馬鹿だと見下していたはずの奏が。
「短い間だったけどありがとう。サークルで会った時は、これからも友達としてよろしくね」
俺は諦めることにした。元々、嘘をついてまで繋ぎ止めたいほど大切だったわけじゃない。
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