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こそばゆくなって、話を変える。
「海外、行ったんじゃないの…? 行くの…?」
「へ」
煙草をくわえながら、変な声を出した。
「新堂と秀人さんは、三枚目だかのアルバムの外国人プロデューサーと新しくバンドを組むって、みんな噂してる」
「そんな話になってんの?」
面白そうに笑うのはあいかわらずだ。
「解散? しないし。秀人がソロやりたいっつーから少し、それぞれ別のことしてるだけ。トールは子どもが産まれて、なるべく家にいたいって言って専業主夫してる」
「そうなんだ…」
それから、と続けた。
「裕貴がいなくなって、なにやってもいまいち乗れないし上手くいかないから、バンド止めて気分変えるのもいいかなって思った」
「…俺?」
じゃ、あのネットの掲示板で見た、ライブでギターソロを間違えたとかいうのも。
俺の、せい?
「…嘘だ」
「ほんと」
あの新堂燿司が。ジャリタレと会えなくなったくらいで。信じられない。
嘘、ともう一度言おうとしたら唇を塞がれた。裕貴のあごに添えられた手のひとさし指と中指のあいだには、火のついていない細い煙草。
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