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応じるのがせいいっぱいだ。
キス、したかったの? 俺と?
やっぱり、信じられない。
それでも、そおっと、おずおずと。手を、伸ばす。活動休止期間だからか、髪色が浅い黒になっている。おそらくこれが本来の色だ。撫ぜると、ほのかに体温を感じられる。ひきよせたら、唇がもっと深く重なる。
それで、ようやく信じられる。
「新堂…ピアスは?」
いつもどこかしらに着けている。耳に唇に舌、へそピ。今日はどこにもみあたらない。
「外した」
顔かたちが変わるわけではないのに、違って感じられる。裕貴の中に、すとんとおさまる。「wormの新堂燿司」というより、素の、ただの新堂に思える。
「なんで…?」
「裕貴の前だから、ぜんぶ脱ぐ」
「好き」という言葉以外でもいろいろなことが伝わってくる。新堂は裕貴の鎖骨を唇でたどる。
「いつもと、ちがう…」
「嫌?」
柔らかくて温かい。裕貴の肌のなだらかなところやくぼんだところに、ぴったりと吸いつく。
「…いやじゃ、ない」
皮膚の上に新堂の微笑みがこぼれたのがわかった。それだけで、また、蕩けそうになる。
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