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「あ…」
腰をひねって逃れようとする。
「裕貴の体、よく見せて」
「や、だめ…」
「どうして」
優しい声だから裕貴は泣きたくなる。なぜだろう、悲しいのとは違うのに。
「だって…変だから」
「なにが」
「…女の子じゃないのに、男にさわられてこんなふうになるの、変だもん」
男に触れてほしいと思うなんて変だ。裕貴はずっとそう思ってきた。
「変じゃない」
「でも…」
「裕貴は自分に自信がない?」
自信?
「あんなにたくさんの人にきゃあきゃあ言われて、かっこいい、かわいいって誉めそやされてるのに」
「…自信なんてない。全然、ない」
海辺の田舎町で生まれ育って、やせっぽちで、いつも広海の後ろに隠れていた。k_kidsに入ったのもダンスの能力が多少あったのも、人気が出たのも、たまたま、運がよかっただけだと思っていた。
「だって俺は…俺のことをほんとに好きだって人はいなくて…ひとりぼっちだった」
ひとりで探していた。なにを探しているかもわからずに。
「あ」
足のつけ根の柔らかいところを強く吸われた。痕をつけられたのだとわかる。
「ん…痛いよ」
「…だったら、これからは俺が裕貴のことひとりじめだな」
「き…嫌い…」
いじわるなのに、ときどき優しいから。優しくしてほしいと思っていないとき急に優しくて、そのあとで優しくしてほしかったのだと気づかされるから。
腰に、軽く歯を立てられた。はあ、と息を吐いてしまう。
「きもちい?」
「きもちよく、ないもんっ…」
新堂にはすべて、ばれているに違いない。また、しかたねえなというふうに笑ったから。それでも、みとめたらとけてなくなってしまいそうだった。
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