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そう、まるでこの蜂蜜みたいに。あまくてとろとろして、かたちがなくなっていく。
探るようにゆっくりと内側に触れてくる。たとえ見なくても新堂だとわかったと思う。いつのまにか、なじんでいた中指。こんなところにまで。少し恥ずかしい。だが、安心するという方がずっと大きかった。
「指だけで、いいの?」
「…やだ」
指だけじゃ、やだよ。
指がひきぬかれると、新堂が入ってくる。熱くて、確かにそこにいる、とわかる。
苦しそうで、だが、どこかみちたりたように息を吐いたその表情に勝手に煽られる。以前さんざん行為をしていたときには見せなかった顔。言葉遣いは、いつもどおりの新堂だ。それなのに、焦れたような、少し子どもっぽくて、やるせない表情をしている。
「新堂…いっぱいキスしろ」
悲しいことを打ち消すためではなく、互いの存在をたしかめるための行為は、こんなに温かい。ただ、急いてわき上がる欲望だけではない。
「…さっきまで生意気だったくせに」
乱暴にあごをつかまれた。
「俺のテクにほだされた?」
「…ちっ、違うもん…」
やり方がどうとか、そんなんじゃない。わかっているくせに。
「いっしょに、いきたい…」
以前はいつも、裕貴が達したのを見届けてから新堂も、だった。だが今はそれでは嫌だった。いっしょに感じたい。
「いつも俺ばっかり、だから…」
「…ん、わかった」
やわ、とみみたぶを甘噛みされるとそれだけで吹っ飛びそうになる。
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