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「でもその前にもう一度聞きたい」
「え…?」
「好きって言ったらいかせてやるよ」
目を、見開いてしまう。こんなときなのに。
「きっ…嫌いっ…」
反射的に押しのけようとした。すると逆に手首を取られて、また唇をふさがれる。
「ん…んっ」
わけがわからなくて強引な、いつもの新堂。だがいつもよりもっとずっと激しい。
「裕貴のことが好きだ」
「…へ、」
夕方、スタジオでは抱きしめられていたから互いに顔を見ていなかった。
でも。今度は文字どおり真正面からだ。
「…ば…っ」
針が振り切れる。蹴飛ばそうとした。だがこのくみしかれた体勢ではできるはずもなく、新堂の肩にぽすっと足の裏が当たっただけだ。
「ばか…!」
顔が、熱い。
新堂は唇の端をちらりと舐める。はは、と声を上げて笑った。
うれしそうな顔、してんじゃねえよっ。
生意気な裕貴の方が好きだし、と言った。変なの。
どうしようもなく、締めつけてしまう。心と体が喜んでいる。
抗えない。本当は、すごく。新堂が少し動くだけできもちいい。
いじわるそうに笑う顔も、運転する涼しげな横顔も本当は。
「…すき」
あふれた。考えて出た言葉ではなく、感情がそのまま、こぼれた。
新堂は驚いて目を細めた。面白がっているような、でも泣きそうな瞳。裕貴のことを、ちゃんと見てくれている。
「新堂…好き」
その言葉をすくいとるように、再三のキス。何度でもしてほしかった。体の奥に熱がともったのがはっきりわかる。伝染った熱と、自らの熱の両方が。
「あ、ん…んっ」
濡れた音。委ねるのは心地よいと思えた。
「裕貴」
そっけない低い声。だが裕貴を包み込む。
その声でもう一度好きだと言われて、どうしようもなく高まってしまう。
「ん、出ちゃ、う」
止まらない。しがみつくと、新堂もまた、裕貴の中を乱暴に揺さぶってそのままとどまる。一瞬後に、放熱。短い呼吸でやり過ごす。
すき
ふたりのあいだを隔てる体の輪郭が融け合っていく。
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