パパラッチ

2/20
前へ
/173ページ
次へ
 来週には、k_kidsの初の海外ツアーがひかえていた。ツアーと言ってもまだお試しみたいなもので三ヶ所きりだ。中国、台湾、フランス。  パリでライブを終えた後は、一週間の休養が与えられている。広海は生真面目にも美術館や博物館を回りたいと言っていた。太一は海外ブランドの日本向けアンバサダーなるものをつとめており、その撮影をする。准は南仏を一人旅すると息巻いていた。  来い、だ? 「…い、行かないもん。ひろといっしょにあちこち回る約束してるし」  海の上のお城にヴェルサイユ宮。はじめてフランスを旅行する日本人が絶対に行く、ベタな観光地巡りをしようと話していた。だから、わざと気のないそぶりで拒否した。 「…好き?」 「…嫌いだよ!」  話を聞いていないし、人の都合を考えてもいないから。すると、スマホの向こうで不敵に笑った気配がした。  そう、裕貴は新堂とあれ以来会っていなかった。あの、互いの気持ちを確かめ合ってこの部屋で体を重ねた日から。  今日はひさしぶりに時間があって、少しでも会えると思っていた。顔を見て話をして、それから。  地図送る、とだけ言ってさよならもなく電話は切れる。  高い天井に、しいんとした空気が戻ってくる。 「嫌い…わがままだもん」
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加