パパラッチ

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「…なに買うの」 「裕貴のぱんつとか鮭とか、ほうれん草。レバーパテ」  俺の下着に食べ物? 現実的なものばかりだ。それを、新堂と買いに出る日が来るとは。  本当にスーパーやドラッグストアをはしごして、食べ物や生活用品を買った。屋台の雑貨や土産物を見て回る。カラフルさと(ひな)びたものが同居した独特の雰囲気。日本とは違う。 「この魚、きれい…」  氷の上に並べられたシーフードは、ながめているだけで飽きない。 「あ、イトヨリダイ。静岡でもよく食べた」 「ブイヤベース、だな」 「そんなの作れるの?」  新堂は意外とまめまめしいところがある。肉じゃがのようないわゆる家庭的なものは作らないし掃除洗濯をしているのを見たことはない。だが、アルコールと煙草を片手に軽食をいつのまにか作っていたり、うたたねする裕貴に毛布をかけてくれたりする。 「っていうかブイヤベースってなに?」  つい、いきおいこんでたずねたら新堂は笑った。裕貴の言ったことが、面白くてたまらないというように。  今日これから、フラットで料理を作って食べるのだ。 「阿部さんとか事務所のスタッフ、誰もいっしょじゃないの?」 「いないよ。仕事関係と会わないわけじゃないけどほぼプライベートだし」  そうなんだ。 「裕貴とふたりきり」  どきっとさせられる。新堂の言葉の一つひとつに対して敏感になっている。 「ふたり、きり…?」 「不安?」  洗いざらしなのだろう髪が、新堂の目元にかかっている。裕貴を見る、薄茶の瞳。手に下げた、バゲットのはみ出た袋。まるで都合のよい夢だ。 「…ううん」  信じられないだけだ。  裕貴に与えられた休暇は一週間。そのあいだじゅう、ずっといっしょにいられる。
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