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ふたりともまとめて「イケメン」と呼ばれる。他のふたりのメンバーもむろん不細工ではないが、准は筋肉馬鹿、太一はナルシストというキャラでブレイクしたから世間的にはそちらの印象の方が強い。
広海は二枚目、ハンサム、と呼ばれる類いの顔の造作をしている。加えて役作り以外では染めないさらさらの髪、細身の長身もあいまって王子様と称される。対して裕貴はかわいいとか女の子みたい、が褒め言葉。水色から白色まで色もかたちもころころ変える髪型に、メンバーと相対すればやや低い背丈。笑うとちらとのぞく犬歯。
だから広海の方がずっとかっこよくて価値があるのだと裕貴は思っていた。
姉が履歴書を勝手に送って、というおきまりのパターンで裕貴は芸能界に入った。オーディションの場に居合わせた社長に、不安だからとついて来てもらった広海もまとめて声をかけられた。裕貴は、「ひろもいっしょならいい」とか細い声で答えたものだ。裕貴はすぐにレッスンに飽き、それを広海が辛抱強くなだめ手を引いて、都心の事務所に小学生ながら通った。
広海と裕貴は各々別のグループで、と上層部は構想していたそうだ。だが裕貴が文字どおり泣き落とした。ふたりは同じk_kidsの所属となり、「ひろゆうコンビ」とレッスン生時代からファンに呼ばれ親しまれている、ある種公認の仲、だ。
ひろ、好き。ずっと好きだった。今も。
生真面目にも新曲のデモテープをイヤホンで聴き始める広海のまっすぐな背中を、裕貴はただ見つめるだけだ。
「んじゃ、おつかれちーん」
太一がふざけながら、ひと足早く帰って行く。また自宅の仕事部屋から生配信をするらしい。准もラジオの仕事があると言って楽屋を出る。
「裕貴。この後時間あるか?」
広海はいつも、どんなくだらない話でも人の目をまっすぐ見る。今も。
「え?」
裕貴の口元についたホイップロールのクリームを、広海は苦笑いしながら指で拭う。裕貴はどぎまぎして顔をそらした。広海の微笑みはしかし、今日はすぐに消えた。
「話があるんだ」
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