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襖の動きに呼応して、森田が襖を見つめたまま身を畳に沈めるように伏せた。同時に襖が激しく音を立てて開き、黒装束の男が二人、刀を振りかざして座敷に雪崩れ込んだ。
と思ったら、森田が弾けるように身を起こし、一瞬に腰の打刀を抜いて鞘に収めた。
ウッと呻いて二人の賊がその場に倒れた。始末屋の石田光成に手解きされた、森田の居合いである。宗右衛門とお喜代は息を呑んで、その光景を見ていた。
ただちに森田は、隣の、奥座敷に続く座敷の襖に近づき、いっきに襖を開けた。
「アッ、アアアアッ」
猫たちにまとわりつかれた建造と梅が、打刀と脇差しを手にしたまま、森田たちの座敷に転がり込んだ。
一瞬に森田は刀と脇差しを抜き、鋒を建造と梅の喉に当てた。建造と梅は手にしていた打刀と脇差しをその場に置いた。
「刺客を放つと、どうなるか、覚悟はできておるな?」
「刺客など、とんでもない・・・」
倒れた二人の賊を見て、二人とも斬られたと思い、建造は白を切っている。
「峰打ちだ。二人が如何なる理由でここに侵入したか、北町奉行所の詮議でわかるだろう。
刺客を放ったお前たちは磔と獄門を覚悟するのだな」
森田に言われ、建造と梅はその場に泣き崩れた。
宗右衛門は店の奉公人を呼んだ。二人の賊と建造と梅を後ろ手に縛り上げると、宗右衛門は、隣町の大工町二丁目に側室と二人で仮住まいしている与力の藤堂八郎に、奉公人を使いに走らせ、建造たち刺客を捕縛した、と知らせた。
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