LOVE - LESS

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「私、そんな攻撃的な見た目してる?」 「してるよ」 「そうか。ギャップがなくて申し訳ない」 まさか律だって華が天使だなどと思ってはいないだろうが。自分が抱く側だという自負しながら、崩れていくサマが堪らなく良い。圧倒的な力の差がありながら、手の中で喘いで果てるのを見るのが良い。当たり前の常識が覆されるのが良い。 ――楽しませてあげるから、不安にならなくたっていい。素直になっちゃえばいい。 さぁこれからというまさにその時、着信音が鳴って華は固まった。間抜けなメロディは、律の上着のポケットから響いている。 「あー……なんだよ」 いわば、これからお楽しみの時間。普通の男なら何もかもを差し置いて本能のまま堪能したい時間。手をポケットに差し込んでスマホを取り出して、てっきり電源を切るのかと思いきや――普通に電話を受けた律に唖然とする。 『あぁ』とか『分かった』とか短い応酬。 「すみません、アレだ。トラブル呼び出し」 ――は? 「ここの支払いは俺が済ませときますから」 ――はぁ? 華を抱き上げてどかし、すうっと立ち上がる。そして極上に爽やかな笑顔で言う。 「またどこかで会いましょう!」 ――あぁぁぁんんんんっっっ? 予想外の事態で、華はドアがゆっくり閉まる様をぼけっと見ていたが、足音が遠ざかり部屋の中が静まると怒りが込み上げてきた。 ――失礼な奴ッッッ! この私が! 最優秀賞取った私が! 普段なら歯牙にも掛けない同業の男を選んでやったのに! なにもせずに帰るなんてアタマおかしくない!? いや絶対おかしい! ほんとに付いてんのかよ! しかも、またどこかで、だと? そこは必死に携帯番号教えてくださいって懇願する場面だろ!? どうか埋め合わせをさせてくださいって土下座する場面だろ!? あいつ、なぜ私に溺れない? こんな屈辱生まれて初めてだ! ムカつく! ムカつく! ギーーー!(怒)
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