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「QRコードとロゴを描画するのはどうです?」
メンバーの目の色が変わった瞬間だった。
「ドローンでQRコードを描くのか……いいね!」
「ただ……QRコードだけだと漠然としすぎるから、なんかもう一捻り欲しいかも」
シモジマさんは腕を組んで唸る。
しばし沈黙が続いたが、律がはっとしてペンを取り紙に書き殴る。
「こういう感じどうです?」
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SYロゴ
1950年→テープレコーダー
1993年→ゲームステーション
2022年→QRコード
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夜空に浮かび上がるSYのロゴ。テープレコーダーやゲームステーションなどSYの代表的な製品が生まれた年が表示される。
そして2022年は、各自がスマホでQRコードを読み取りアクセスすると正解が分かる――というような流れ。
「それだ! 深澤君と新堂さんナイス連携!」
一瞬で企画案が決定した。
望み度通りの描画をするためにどの程度のドローンが必要になるか。どこでイベントを行うのか。提携先は。規制の問題は。すべてを踏まえた上で可能なのか。クリアしなければならない問題は山積みだ。
ただ、土台が決まればあとは走り出すのみ。サッカーや野球でいうところの監督にあたるクリエイティブディレクターのシモジマさんの企画に合わせて、そのポジションのプロたちが走り出す。
今回は告知イベントが目玉になるであろうが、華と律は広告やウェブのクリエイティブ案を練る。デザイン領域がふたりで余力があるので華の方でウェブ制作も請け負うことになった。
「さすが新堂華って感じだったな。切れ味が抜群だったわ」
「あんたの改案も良かったよ」
帰りしな、互いを褒め合い照れ笑う。お世辞じゃなく今日は本当に良い相乗効果が生まれた。
「帰るわ。じゃあな」
「うん。また」
手を上げて律に挨拶をして翔伝を後にする。
華の結婚の話になった時、律が泣きそうな顔をしていたことには触れなかった。
代理店に戻れば昔と同じ悲劇が再び起こる可能性もある。なかったとしても、組織に所属しているのとフリーランスでは快適さは天と地。本当にそこまでして組織に戻りたかったのかという疑問が残る。
――自由志向なのかね? フリーランスということは後ろ盾がないということでもある。
――それは……。
――話にならんな。そんな男に大事な娘はやれない。
まさか肇のあの言葉を気にしているのではないかと頭を過ぎった。ただそれでは華を振った律の言動とは一致しない。
――でも……。あの父親は昔、妹が付き合っていた恋人と別れさせた。たぶん、かなり姑息で非道な手を使って。その話になると彼は口を閉ざすので確定ではないが、華はそうだと確信している。よくよく考えたらあんなに愛し合っていたのにそんな急に気持ちが変わるわけがない。
だからまたあいつが……と考えて頭を振る。
――バカだな。なにを都合のいい方向に考えてるんだ。妹と彼は確かに愛し合っていたが、自分と律は違う。律には女がいて、私には亜澄がいるじゃないか。
今は、他ごとを考えている場合じゃない。
今は、仕事仲間。それも億単位が動く超重要な仕事。個人的なことは考えないようにする。
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