LOVE - END

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問題が発生したから来てくれと律に言われて翔伝に赴いている。問題が発生しない案件なんかほぼないので一体なんなんだろうかと予想する。今回はドローン関係が一番のネックなのでまぁそれだろうなと考えていたが、違った。 「少し面倒なことになった」 会議室にはクリエイティブディレクターのシモジマさんと律。ふたりは深刻そうな表情でじっとりしている。むしろ律なんかは怒ってすらいるような気がする。 「新堂さん、道永拓也と付き合ってたりしてる?」 「はいっ?」 華にとっては予想外すぎる問いだった。道永といえば前回の雪月花の案件で次男役を演じた俳優。 「記事が」 「記事?」 差し出された紙を手に取る。よくある白黒の熱愛記事。並んで歩いている男女を映したもので、男の方は道永だ。女の方は目線が入っているが、ハイブランドのスーツを身に纏っている。 「これ、私?」 【道永拓也、有名デザイナーとデート!】とか書かれている。しかも詳細文を読めばその後ふたりがどうしたこうしたとかなり細かく書かれている。ナンダコレ、という思いでいっぱいになる。 「そういえば先日、テレビ局に行った際に少しお会いしましたけどそれだけです。写真はその時のものですね。すぐ別れましたし、書かれてることは全部嘘ですよ」 テレビ局を出たところで会ったので挨拶をした。華にとって彼はお客様のようなものなのでスルーはできない。例によって気安く口説かれたがあしらって帰った。それだけ。華にとっては言われるまで思い出しもしない微々たる出来事。 「そっか……捏造記事なのか」 「しかもガセネタ多発の5流週刊誌じゃないですか。こんなの誰が信じるんですか」 「そうなんだけどね」 根も葉もない低級記事が世に出るなんて勘弁してほしい。 「問題は、この件がSYの担当者の耳に入ってしまったところなんだよね。契約中のCMタレントと私的な関係を持つようなスタッフがチームにいるっていうのは問題だと、言われてしまって……」 ――なんだそりゃあ? 「だから、これは嘘なんですって! 嘘ベースで話を積んで意味が分からないんですけど!」 声を荒げたりしない律が、シモジマさんに詰め寄らんばかりに大声を出している。 「ユーリとも付き合ってたとか?」 「それは本当ですね」 「!?」 正式にはただのセフレだが、まぁ細かい相違は省く。 「ただ、完全に契約期間外の話ですが」 「なるほどねぇ……」 シモジマさんは頭を抱えて唸る。この呼び出しの着地点が見えてきた。
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