LOVE - END

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「たとえ彼女がユーリや道永と交際していたとしても、独身なんだから何も問題ないかと思いますが」 「一般論で語れば当然そうなんだけど、熱愛報道でタレントの価値は少なからず下がる」 タレントはナマモノの商品だ。スキャンダルが発覚すれば価値は暴落する。イコールそのタレントを起用した企業の商品の価値まで影響する。 「そもそも、今回はドローンが核でタレントを使う案でもないのに意味が分かりません!」 「だけど絶対使わないとも言い切れないよね」 「だから――!」 「つまり」 きゃんきゃん吠えている律を遮って華は結論を急いだ。ここでごちゃごちゃやっている時間がもったいない。 「今回の案件は、降りろという意味ですか?」 単刀直入に問う。 「いや、誤解してほしくないのは、個人の言動を咎めるつもりはまったくないんだよ。タレントと恋愛関係になるなんて少なくないし。ただ先方に槍玉にあげられてしまうとこっちとしてはなんとも……」 「こんな理由で大事なメンバーを降ろすなんて話聞いたことないですよっ!」 たった一つのリスクすらも排除したい企業側の言い分も分かる。万全の状態で望みたいシモジマさんの気持ちも分かる。 「分かりました。残念ですが今回はなかったことに」 華はビジネスライクに言って、会議室を後にした。 また過去に足を引っ張られてしまった。仕事だけが取り柄だと思っていただけに、意図しない理由で取り上げられるのはかなり痛い。弱った心に隙間風が吹きすさんで肩を丸めた。 「華っ!」 翔伝のビルを出たところで律が追いかけてくる。 「なんだ――」 むぎゅうっと両頬を摘まれる。 「いっ!?」 「ばかあほっ!」 「いひゃ!? ひゃなせっ!」 「企画を投げ出すなよ! ドローンQRは誰が考えた企画だ!」 そんなこと言われても外注の立場ではどうしようもならない。律の手を思い切り振り解く。 「あんたがいい感じにしてくれればそれでいいいよ」 「いやそれはおかしいだろ」 「別におかしくないだろ」 最初の案を出したのは華だが、自分がいなくともきっと律がいい感じに案を昇華させてくれるはず。仕事に関しては信頼している。
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