LOVE - END

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シモジマさんとの再度の話し合い末、チーム解散の危機は逃れた。高木が絡んでいる確証が現時点ではないが、ここで乱されては思う壺という論調が効いたようだ。シモジマさんは高木の元同僚である律の言い分を受け入れた。 「ユーリと付き合ってたのは本当に契約期間外?」 「ほんとだよ。何年か経ってから偶然会ったんだ」 「ふむ……」 律に馴れ初めを聞かれる。広告主であるSYが文句を言ってきている以上、こちらも対応しなければならない。 「ユーリとのことも否定しようか」 シモジマさんが言った。 「向こうも何かしら証拠を持ってる可能性が高いと思うんですよね。写真とか動画とか。否定してバレたら余計に苦しくなるかも」 「新堂さんとユーリが密会してる写真を高木が持ってたとする。でも、出したくても出せないんじゃないかな? 証拠って、つまり写真や動画。デジタル媒体の記録で交際が契約期間外だって証明できるじゃないか」 「契約期間外だと証明できても、グレーな印象を与えることになります」 「あー……決済者がそこらへんをどう捉えるかだよなぁ」 華はスキャンダル起こした政治家みたいな気分で、申し訳ない気持ちでふたりのやりとりを聞いていた。 道永とユーリ、共に根も葉もない噂だと否定するか。心象がグレーになってでも真実を話すか……どちらにしても賭けに変わりはない。 「で、彼女を降ろせと言ってきた担当者は誰ですか?」 次いで律はシモジマさんに訊く。 「柿原という広報部長なんだけど」 「柿原……あぁ、仏頂面の」 オリエンテーションにも参加していたが、終始腕を組んでムスッとした表情が印象的だった人物。 「以前別件で仕事をしたけど、現社長の派閥ではないが、社内権力は持ってる人だ」 華にとっては今回が初対面。 「なぁ、腕のいい探偵の知り合いとかいない?」 「探偵? なんで?」 「よく言うよなぁ。撃っていいのは撃たれる覚悟があるやつだけだってさ」 びっくりする。律が史上最凶に性格の悪い顔をしているから。
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