LOVE - END

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自分のオフィスに戻ると、亜澄と応接室に入った。 「律のこと、あのオヤジからなんか聞いてる?」 こんなプライベートな内容、オフィスでやるべきではない。だがここはあえてオフィスで。 律のことも亜澄に話すべきではないのは分かっているが、ここはひとつ覚悟して向き合う。 「またなんか裏で手を回したんじゃないかと思ってる。あいつには前科があるから」 「過去の件は解りかねますが、そのような行いはお父様はしておりません」 亜澄はすぐさま否定する。律の話題で不快だろうが、彼らしく表情を崩さない。 「本当に!? 信用ならない」 「お父様は、彼の素性を調べた。そして新堂家にふさわしくないと彼に伝えた。それだけです」 「律とあいつ、会ったの?」 「はい」 どうせ肇のことだ、悪い虫はふさわしくないだのとボロカスのクソミソに言い放ったのだ。 「そんなことより、もう忘れてしまったのですか? そもそも彼はあなたに復讐したかっただけです。好意なんかではありません」 律の中にあるのは復讐心だけで言動のすべては計算づくだった。華に気持ちなんかないと、最近までは納得していた。 ――でもなんか違うんだ。 違和感が拭えないんだ。 「最初はそうだったかもしれない。でも律は私が好きだよ」 そんなこと本人は一言も言ってない。だが思い切って口に出してみたら腹落ちした。 「それで今頑張ってんだと思う。あのオヤジに認められるように」 結婚すると言って泣きそうになっていた顔。 華が攻撃され、守ろうと必死に奔走する姿。 わざわざ組織に戻ってがむしゃらにやってる姿。 ふとした時の視線。 律から向けられるものは特別なのだ。 好きだと伝えた華に律は『応えられない』と返した。 『今の自分では』という意味だったのではないか。 「華さん……まだそんなことを……。ご自身の都合のいいように考えないでください……」 冷静沈着な表情は崩れ、ショックを受けている。 「戯言なのかどうか律に聞けば分かるから」 「それを聞いてどうするのですか?」 口調は至って静かだが、底知れない凄みを帯びている。 律と確かめ合う――では、結婚も視野に付き合っていた亜澄の存在は一体どうなるのか、と……。 「亜澄のこと、利用してごめんね」 謝罪を口にするしかない。 人生で初めて男を好きになって破れて自分を見失った。そんな時、亜澄が傷を癒すように優しくしてくれた。ずっと一緒にやってきた阿吽の呼吸で仕事ができるパートナーで、他の男とは違う大切な存在。見た目だって、律より亜澄の方が全然タイプだ。結婚もありかもしれないと思った。そんな未来もいいかもしれないと思った。 でもそれは――気の迷いだった。 「私、律しか好きじゃない」 結局、自分のシンプルな気持ちはそれ。華が今考えていることが全て妄想で、律が華を好きじゃなかったとしても。 復讐だったとしても。
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