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「だけど、せめてACC広告賞の総務大臣賞か金賞の勲章はほしい……」
ACC TOKYO CRATIVITY AWARDSは日本では一番の広告賞。受賞すればクリエイターとして箔がつくのは間違いない、が。
「馬鹿だなー。あんたはもう充分凄いよ」
『華に見合う男になってから』と躍起になっている律を抱きしめてやる。
「そりゃあACC受賞したらもっと凄いけどさ。私と張り合えるのはあんたくらいだし。信じろよ」
「……華。ううっ……」
「お、可愛いな。よーしよぉし」
華の胸で泣いてしがみついてわっしゃわしゃ撫でられている律も、今までのS全開で張り合ってくる律も好きだ。出世しようが賞を受賞しようが関係ない。
「でも華は……ACC1回受賞してるじゃん……」
ボソッといじけた風に言う。
「おいっ! 私がここまで言ってやってんだから尻尾振ってさぁ、ヨダレ垂らしてノリノリでこいよ! なにいじけてんだよ!」
「犬じゃねぇしっ!」
「何言ってんだ! 完全に今犬ムーブだっただろうがっ!」
互いの気持ちを確認し合ったら。
お互いを想い合ってるって分かったら。
普通は最高潮になって見つめ合って、スキスキ言い合う熱い夜が始まるんじゃないのか? にも関わらずナンダコレは。
「だいたいACCを受賞するだぁ? 聞き捨てならんな。悪いが私がもらうよ」
「あ? 今年は俺だよ! 当たり前だろっ!」
「気合い入ってんだから知らんが、絶対に負かしてやるからな!」
なんで私たちはこうなんだ!
まだまだライバル関係は続きそう――。
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