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LOVE - ENDLESS
都内某ホテルの宴会場では、ACC TOKYO CRATIVITY AWARDSの授賞式及びパーティーが行われていた。集まったゲストたちは式が始まるまでの間に名刺交換をしたり談笑したりしている。華も輪に混じりにこやかに会話をしていた。
「皆様、大変お待たせいたしました! これより贈賞式を開始いたします」
会場内がやや薄暗くなり、主催者の挨拶を終えるといよいよ授与式が行われる。
部門はデザイン、ラジオ、ブランデッド・コミュニケーションなど全部で8部門。ひとつの部門の中で総務大臣賞を最高ランクとし、金銀銅のランク付けがされる。大型の広告賞なだけあって顔ぶれもさまざまだし、出演タレントやキャラクターなんかも登壇したりして賑やかだ。
もちろん華も登壇側だ。今年は基礎化粧品『雪月花』のCMがゴールド賞を受賞した。毎年何かしらの作品が受賞できるのはクリエイターにとっては嬉しいことである。だが、じんわりと悔しい思いが胸の中にある。そう、最高ランクを取り損ねたからだ。
「CM部門、総務大臣賞は――」
最高ランクを受賞したチームが登壇する。審査員により賞状や記念品類が手渡され、なぜ受賞に至ったのか、どこがどう素晴らしかったのかが丁寧に語られる。
こんな時、大体の人は目頭を熱くしながらもきりっとした表情で聞いている。だが栄誉を手にし感極まったらしい、涙を隠しきれていない男がひとりいる。
――ばかっ、人前で泣いちゃダメだろ!
華はなんだか姉のような親のようなハラハラした気持ちで壇上の律を眺めていた。
授賞式の目処が立つと会場の傍にブッフェスタイルでの食事が用意され、歓談タイムになる。スクリーンには受賞CMや作品が代わるがわる映し出されている。
華は食事よりもニコチン。雑談よりもニコチン。会場を抜けて喫煙ルームへ向かう。例によって後を追いかけてくる人物がいた。
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