LOVE - LESS

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3人の中の誰でもよかった。愛も恋もなく互いになく割り切った関係。華にとって行為はストレスの発散、スポーツやカラオケと同じだった。 特定の人と付き合い続けるのは、性格上無理だった。 『ごめんなさい。今日は遠征なんだ。残念すぎる。近々誘ってもらえると喜びます」 コースターにロックグラスがサーブされるのと同時にスポーツ選手から連絡が返ってくる。ちっと舌打ちをする華に、蝶ネクタイのバーテンの動きが一瞬止まった。素知らぬ顔をして澄んだ琥珀色を口に運んだ。 『華さんこんばんは。連絡ありがとう。汐留にいるんだね。あいにくだけど今日はどうしても予定があります。是非またお誘い、お待ちしています」 次いで弁護士。 特定の恋人は作らずに遊んでいるが、かといって不特定多数の男と行為をするわけではない。上場企業を経営している親や親族達、そして曲がりなりにも組織のトップである自身。守るものは多い。 だから独身で、そこそこの社会的地位があって、見た目がよく、自分の好きにできる相手を厳選して遊んでいる。メンツは固定ではなく、相手に恋人が出来たら終わり。誰かの心を傷つける行いはしない、それが華の遊びのルールだ。 「チェックしてください」 俳優から『今日はまだ撮影が残ってるよ』と返事が返ってくると共にグラスを空にして席を立った。 ――くそ。こんな日に限って誰も捕まらないなんて! ――タバコが吸いたい。 募るばかりの苛立ちに、せめて紫煙で癒されたいと願うがここでは吸えない。酒を飲みながらタバコを吸えないなんて、まったくなんなんだこの世の中は。華はクレジットカードで会計を済ませて出入り口に向かう。 出口の前で丁度客が入って来た。30代中盤くらいのサラリーマン。酔っぱらいのような雰囲気なのが気になったが、華が出るのを待ってくれているので軽く会釈をしてすれ違おうとすると、目の前に立ちはだかりなにやら通せんぼしてくる。 「よかったら、一緒に飲みませんか?」 鼻の下を伸ばしている理由は分かる。華が大胆なオフショルダーのドレスを着ているからだ。 「すみません、急いでいますので」 「ひとりなんでしょ? いいじゃんいいじゃん」 「痛っ……」 いきなり腕を強く掴まれ、その気安さにブチッと切れた。 「せっかくこんなド派手なドレス着てるのに――ぁっぐ!?」 ストレスフル状態の今の華に絡むとは、もはや飛んで火にいる夏の虫と変わらない。バーテンが止めに入るまでもない、12センチヒールの足で男の腹に蹴りをお見舞いした。 「すみませーん。どいてくださらないから足が滑っちゃいましたぁ」 微笑み、くの字に折れる男の脇をするりと抜けていく。 ――汚ねぇ手で触んな。私に触っていいのは私が許可した男だけだ。
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