LOVE - LESS

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「俺はちょっと口寂しくなってしまいまして」 「私もです」 「それにしても最近スモーカーは肩身が狭いですね」 「本当に」 一服のために1階に来たらしい。しかし大宴会場がある3階にも喫煙スペースがあったはずなのに何故わざわざ1階に来たのだろう。みみっちいスペースだから弾き出されたのだろうか。 ふと、煙を吐き出す律の横顔を盗み見る。少し垂れ目なのに奥二重だからか色気を帯びた目元。おでこ、鼻、口、顎。西洋人のように出っ張った後頭部、突き出た喉仏。美男子と呼ばれる起伏を完璧に揃えている。 顔面に文句のつけどころはない。見た目だけなら俳優にも引けを取らない。もの凄くがっしりというわけではないが、腕や胸、背中の張りから普段から鍛えているのが窺える。背が高いので包み込まれたらすっぽりとおさまりそうだ。 そういえば、イケメンなのに女関係が謎だからゲイ疑惑が持ち上がっているとか聞いたが……。 華の視線に気付いて彼は薄く微笑んだ。その瞳の中にはっきりと欲の色が見えて、なるほど、ゲイではないな……と悟った。性的な目で見てるのはお互い様のようだ。 急激に興味をそそられた。 しかし、同業者。これまで直接対決はなかったが、場合によってはライバルにもなるであろう。もう少し正常な時であれば迷わず遠慮する場面。華は不眠と疲労と欲求不満で鈍る頭で、今この滾る欲望と、リスクを天秤にかける。 「良かったら一緒に飲みません? あなたと一度ゆっくり話してみたかった」 しかし、華が結論を出すよりも先に律が誘ってきた。小慣れた口調に遊び慣れていることが垣間見える。 「いいですよ。火傷のお詫びにシャンパンでも御馳走させてください」 もはや悩むまでもない。 「お部屋で」 ――今夜は、この男でいい。
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