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「ただ、短期・長期両軸で動かすとなるとどうしてもコストはかさむ。役員が目先の結果しか求めてないタイプばかりだと、この案は却下されてしまうかもしれない」
「採用されても1年で終わらせられる可能性もありますね」
中長期的な広告戦略を提案して採用されたとしたら、クライアントはそれを経営計画に組み込む必要がある。だが、役員はだいたい1年で改選されるため数字的な成長が見られなければ新しい役員に変わったタイミングで廃止される可能性が高い。
「やっぱりネックなのはコスト問題」
「あ〜結局そこなんですよね」
それに関して、華にアイデアがある。
「やっぱりテレビCMを減らしてデジタル変革を行うべきじゃないですか?」
ふたりは『えっ』と声を揃えて驚いた。
調べたところ、サンカヨウ社の年間宣伝費は約2500億。そのうちテレビCMが約2000億円にも及ぶのだからテレビCMがいかに費用を圧迫しているかが分かる。テレビCMはリーチが広いことが最大の利点だったが、今の時代コストに見合わなくなってきている。
反面デジタル広告は費用も安くセグメントを行えるのでターゲットを絞って配信できるし、効果測定もしやすい。品川や渋谷の大型デジタルサイネージのような目立つものなど手段も豊富にある。
「テレビ離れでテレビCMが昔ほどの影響力はないのはもう明らかですよね……」
企業の信頼性が購入の決め手になったのは一昔前。特に化粧品類はテレビよりSNSを参考にするというマーケティング結果も出ている。ユーザーが企業側の発信を信じなくなり、その代わりにインフルエンサーたちをあてにするようになった。
「とはいえいきなりテレビCMを切るのは色んな意味で難しいでしょうし、必要な場面もあるとは思いますので、徐々にデジタル移行できるのがいいのではないかなぁなんて思いました」
脱テレビ化は遅かれ早かれ取りかかるべき問題。サンカヨウ社は業界最大手として、よそに追従するくらいなら先陣を切った方がいいと、華は思う。
他にも様々な案は出たものの、結局3人の最初のアイデアを土台とし、営業や経営企画、広報など各方面のプロを集め徹底的な肉付けを行なってプレゼンに挑んだ。
結果、華たちは勝利を勝ち取った。
つまり、律に勝った。
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