何度も連れ戻される家

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今日、引っ越しをするらしい。 引っ越しはこれで多分、2回目。 自分には合わない、段々と大きくなっていく家。 何度も「引っ越したくない。今のままでいい。」 そう伝えたけれど、伝わらない。 ニコニコしたまま 「はいはい。楽しみなのね。 ちゃんと伝わってるから大丈夫よ。」 何て言われる。 何をいってもそう。無駄なのだ。 伝わっていないのに、 分かり切ったかのよう言葉で返して来る。 一つも伝わってないくせに、 自分に都合よく解釈しないで欲しいものだ。 実際に、何度か家出をしたことがある。 あの人が寝ていたり、 家を出た瞬間を狙って抜け出した。 こっちがいくら訴えても聞いてくれないのなら、 自分から動くしかない。 いつまでも子どもだと思われたら困る。 案外かしこいのだ。 だけど、いつだって連れ戻される。 毎回首根っこを掴まれて、 無理やりまたこの家に閉じ込められる。 周りにはこの人しかいない。 嫌がるこちらの言うことなど耳を傾けない。 見つからない様に毎回かくれんぼをしても、 いつだって相手には適わない。 そうして、ほら。 また捕まった。 新しい家を見ている隙を図って 全速力で逃げ出す。 ところが、 「あ、こら!」という声が聞こえて瞬間、 気が付いたら無様な姿で捕まえられた。 なんとも短い逃走劇。 相手は短いため息をついて、 自分をジッと見つめた。 「また逃げ出して。 何がそんなに不満なの? ご飯だって与えてるし、 水だってあげてる。 部屋だってちゃんと綺麗にしてるじゃない。
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