私が歌う理由

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中学生になった私は合唱部へと入った。 私はママの隣に立つために歌を始めたのだ。 同じ楽器ではなく、隣に立つことが出来るものを考えた時、 歌しか無いって私は思った。 遺伝なのかは分からない、でも私は高音の掴み方がうまいらしく、 パートはソプラノとなった。 高校受験は推薦で音楽のさかんな高校へと進学した。 ある歌の発表会の後、フランスのパリにある学校からのオファーを受けた。 私はその名前を聞いて驚いた。 エコール・ノルマル、フランスのパリにある超有名な音楽院だ。 しかも何より驚いたのは、ママがパパと出逢う前に在籍していた学校だったからだ。 運命というものなのだろうか……。 私はパパに反対されても行こうと決意し、その事を勘当覚悟で告げると、思わぬ応えが彼から返って来た。 「娘よ、お前は彼女の才能を受け継いでいる。私にはお前の決めた道を閉ざす事はできない。行きなさい、そして彼女の生まれたその土地で自分の夢を見つけそれを掴みなさい、そこでお前も才能を開花させるといい」 もの凄く嬉しかった。 まさか反対すると思っていたのに、パパは私の事を全力で応援してくれるのだから。 私もパパに向かって言った。 「パパ、私が必ずママを迎えに行ってくるから、だからその時まで待ってて」 彼は下を向いたまま何も言わなかったが、肩が小刻みに震えていたのに気付き、パパの心情が痛いほどわかった。パパは今でも彼女を愛しているのだと。
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