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華やかなパリの町へと踏み込んだ私は、それとはうって変わって地獄の特訓の日々を過ごした。
先生は想像以上に厳しく、そして熱心な人達ばかりだった。
私は歌唱法を習う前に、まずは徹底的に耳を鍛えられた。
歌はただ口から声を出すだけではダメなのだと教えられた。
どうやって声を出すのか、プロの歌手の声を聴き、どのような声の当て方をしているのか、それを聴きとる耳が出来ない限り、歌えないのだと彼等は私に毎日毎日その一点を語った。
私は授業が終わると、真っ先に演劇上へと向かった。
既に一線で活躍しているプロの声を聞くためだ。
先生が言うには録音して加工されている声を聞いても、声の出し方を理解できないのだと言う。最初こそ私は何を言ってるのか分からなかったが、毎日の指導時の先生の歌声とプロの歌手の声を生で聴くのを繰り返しているうちに、声の出し方が分かるようになっていった。
そしてある発声訓練の時、先生は急にピアノの演奏を止めると、強く私を抱きしめた。
「トレビアーン、クロエ」
先生から認められた瞬間だった。
これを機にトレーニングは歌を歌うこと中心へと変わって行った。
本当の意味で歌を歌えるようになった私は、音程を気にせずに表現することに集中できるようになった。
私も自分の声の理想を求め、それが私の夢となった。
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