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「この鳴り響く音は何ですか!?」
半ば意識を飛ばしていた春真は我に返り、拓海は何でも無い様に笑った。
「ただのアラームだよ。そろそろパトロールの時間だよって言うお知らせ」
拓海の朗らかな表情に明良はひと安心する。
「なんだ。びっくりしちゃいました」
拓海は笑顔のまま春真に話をふる。
「じゃあ外出る前に準備運動でもしとく?」
うんと春真。
「明良ちゃんは初めてだからちょっと長めに時間とった方がいっか。」
「そだね。なら2年くらい?」
軽快に話を進める春真と拓海の肩を鷲掴みにしたのは明良だ。
「ちょっと待て下さい!なんで準備運動で2年!?少年マンガの主人公がグレードアップできるスパンなんですが!」
「だって」
「ねえ」
2人は可哀想な子を見る目をしている。
「身体慣らしとかないと死んじゃうよ。」
春真。
「基礎運動は大事だから」
拓海。
「基礎運動とかの問題じゃないんですが!てかそんなに怖い場所なんですかここ!?第一、2年間も学校休めないでしょ!」
物申す明良はテーブルをバンバン叩く。
「大丈夫!修行場で過ごした2年間は現代ではものの数時間でしかないから!」
「精神となんとやらの部屋か!某神漫画の設定パクってません!?」
「ちなみに修行場の部屋出たら見た目年齢は修行前に戻るんだけどね」
「仙豆もどきもあるよ。「今日も1日疲れたな」とか「ヤバい。死にそうだな」って言う夜に1錠。
「ハイポーション並に良く効くよ。ちなみにラムネ菓子みたいに食べやすいから依存症に注意してね☆」
「注意してね☆じゃない!」
「あとそれと警備隊専用の十手持っといて」
話を逸らされた明良は疑問符を頭に浮かべる。
「十手?」
「うん」と春真。
「簡単にいうと警棒。形からしてうちらは十手って呼んでる」
説明する拓海は机の引き出しから布に包まれた物を取り出す。
「新しいのが届くまで春真のお古使って。ユニホーム一式もこの中だから」
拓海がまず風呂敷からズルリと取り出したのは、まるで江戸時代の役人が所持していたまんま十手の様な形の金属。
「2本の柄の先が紐で繋がってるから1人一組ってなってるの」
「身分証明の代わりにもなるしユニホームに着替えたら腰紐にさしておいた方が良いよ。便利だからね」
「了解です」
言われた通り明良は十手を持ち…マジマジと見つめる。
「この錆びたとこ…」
「あ、ソレ気になっちゃう?」
「血痕って洗っても落ちにくいからねー」
「これ血の跡なんですか!?」
「そだよ」
平然とする2人。
「警棒って名前の只の鈍器だからね」
明良は素早く十手をテーブルに置き己の肩を両手で抱いた。
「怖ッ」
「怖い時は目を瞑って「えいッ」だよ」
春真はイイ顔をしている。
「投げ方大事」
頷く拓海。
「別に投げ方レクチャーして欲しいワケじゃあありません!「えいッ」じゃない!」
春真はグッと親指を上げた拳を明良に向けた。
「投げた十手回収するにはもう片方の紐引っ張ればオッケーだから!」
「ああもう何処から突っ込めば!?」
常識人明良のキャパシティはパンク寸前だ。
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