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私は沖田さんの静止も聞かず、窓枠にかけた足を蹴って、沖田さんの部屋を目掛けて飛びました。私は相当興奮していたのでしょう。4階の窓を飛び移る事に、全く怖さを感じませんでした。私は窓から窓へと飛んで、沖田さんの胸に向かってダイブしたのです。
沖田さんが叫びます。
「危ないですよ!」
沖田さんが手を広げ、私を受け止める仕草をします。私は沖田さんの胸へと飛び込んで行きました。沖田さんが、私にどんどん近づいて、私は沖田さんの身体にぶつかったのです。しかしぶつかったはずなのに、私はそこで止まらず、沖田さんの身体をすり抜けていきました。私は沖田さんの部屋の床に転げ落ちました。
私は部屋の中腹で上半身を起こし、窓辺を振り返り沖田さん見ました。窓を背にした沖田さんが、私を心配そうに見ていました。
「私の身体は沖田さんの身体に、確かに当たったのに」
沖田さんはガッカリした様子でした。
「明音さんを受け止めたかったけど、やっぱりだめでした」
私は起き上がろうとして、膝に痛みを感じてよろけました。床へ転がった時に、膝を痛めたのでしょう。
「沖田さんの身体を、私はすり抜けたようです。何が起きたんでしょうか? こんな事が起こるはずかないですよね?」
沖田さんは表情を固くして言いました。
「僕が地縛霊だからです。明音さんは、僕が人に見えて会話もできるから、もしかしたら触れられるかもと思ったんですが。ダメでした」
私は膝の痛みを堪えて聞きました。
「地縛霊って……。つまりあなたは……」
「もう死んだ人間です」
「なんで地縛霊になったんですか?」
沖田さんが窓の外を見て言いました。
「この窓から」
私は窓辺に立つ沖田さんの隣へと、傷んだ膝を庇いながら歩いて行き、沖田さんの視線の先を見ました。
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