記憶はオルゴールと共に

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 若い男女が、ダイニングテーブルを囲んでいる。 「愛してるよ」 「私も愛してる」  豪華とは言えない食事だが、二人は幸せそうに笑っていた。  幼い兄弟が走り回っている。  小さい方の男の子が柱に思いっきりぶつかって泣き出した。 「大丈夫?」  母親らしき女性が現れて頭を撫でる。 「ずーるーい!」 「はいはい」  騒ぐ大きい方の男の子に苦笑して、母親は二人をまとめて抱きしめた。  兄弟は成長して、二人とも母親の身長を越えている。父親と母親と兄弟は、四人でダイニングテーブルを囲んでいた。 「卒業おめでとう」 「おめでとう!」 「おめでとう」  口々に祝福されて、主役である兄は照れたように笑う。家族の団欒を、家は包み込むように見守っていた。
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