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一章
「わたくしの話を聞いてくださいますか?」
「なんだい?」
「わたくし、もう良い子でいるのをやめるわ。だってね、わたくしが損をするでしょう?」
「……アシュリー」
「みんな大っ嫌い……だからわたくしがすべて壊してあげる」
* * *
サルバリー王国に、神に愛された不思議な力を持つ聖女と言われる少女がいた。
病や怪我の症状を抑え、魔獣から国を守る結界を張るために力を使う。
アシュリー・エルネット
明るいミルクティー色の髪に、ライトブルーの瞳。
幼い頃から、周囲に気を配り、誰にでも優しく、笑顔を絶やさないアシュリーは、国民たちに天使のようだと言われていた。
そしてこの国の王太子であるオースティン・ジノ・サルバリーの婚約者であった。
グレーの髪は長く伸ばしておりグリーンの瞳は垂れ目で泣きぼくろがあり可愛らしい顔立ちをしていたが、オースティンは生まれつき肺が弱く病を患っていた。
十歳まで生きられないだろう……そう言われていた。
しかしエルネット公爵に連れられて、王宮に遊びに来ていたアシュリーは、フラフラと部屋から抜け出して咳き込みながら懸命に歩こうとしているオースティンに出会う。
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