一章

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アシュリーは自らの腕をギュッと握った。 しかし表情だけは取り繕い、ゆっくりと口端を上げてから口を開く。 「お父様とお母様はわたくしのことを一番に考えて言ってくださっているのだと思います」 「……そうですか」 「お兄様にも……心配ばかり掛けてしまい情けないですわ」 「そんなことはない。あなたは優しい人です」 「え……?」 「僕はそう思います」 バートはアシュリーのことを気遣うように聞いてくれた。 見たこともない絹糸のような白髪と優しい青い瞳があった。 ロイスとクララ以外で、こんな風に温かい気持ちになったのは初めてかもしれない。 そんな時、バートの手のひらに傷があることに気付いたアシュリーは手を伸ばす。 「アシュリー嬢?」 「バート様、怪我をしたのですか?」 「大したことではありませんよ」 「いいえ。悪化したら大変ですわ」 アシュリーがバートの手を握り、力を込めると淡い光が包み込む。 あっという間に怪我はよくなってしまう。 「ありがとうございます。アシュリー嬢」 「いえ、お役に立ててよかったですわ」 「やはり……あなたは何も変わらないのですね」 「え……?」 「なんでもありませんよ」
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