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「……っ」
「本物の聖女は異界から来たユイナだったのよ。それからオースティンに相応しいのはアシュリー、あなたじゃないわ」
アシュリーは震える手を押さえていた。
その言葉で今から何を言われてしまうのか察しがついてしまった。
確かに体調管理を怠った自分にも非があるだろう。
しかしそれも体調が回復するにつれて力ももどりつつある。
アシュリーはまだ会ったことはないが、ユイナの力はアシュリーよりもずっと強いそうだ。
彼女の力の方が役に立つ、そう判断したのだろう。
(わたくしもまだまだ役に立てます……!今度は体調管理もしっかりしますって伝えないといけないのに)
そう言いたいのに、緊張から声が出てこなかった。
アシュリーは俯いて唇を噛み締めることしかできない。
息苦しさを感じながらもアシュリーが声を上げようとした時だった。
「アシュリーとオースティンの婚約は今日限りで破棄する。オースティンの新しい婚約者は今日からユイナ・アイダとする」
「……ッ!?」
「これはもう決定事項だ。それがサルバリー王国のためになる」
アシュリーは有無を言わせないその言葉に愕然としていた。
一方的に破棄される婚約、反論することも許されない。
頭に過るのは喧嘩ばかりしている両親の顔。
そして、直感的にわかってしまったのだ。
このまま婚約破棄されてしまえば待ち受けているものは間違いなく……。
そんなアシュリーにさらに追い討ちをかけることが起こる。
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